
インタビューしたのは東寺方にある「リカーMORISAWA」の6代目店主・森澤久仁平さん。同店の歴史は古く、始まりは150年以上前にさかのぼる。かつては薬や新聞、日用品、お酒などさまざまなものを販売する「森沢商店」の名で知られる“村の百貨店”だった。
東寺方で生まれ、東寺方小で学び、中学と高校は東京・港区にある私学に通ってアメリカンフットボールに熱中。タフさと冷静な頭脳が必要と言われる”戦略スポーツ”の魅力、チームスポーツの面白さの虜になった。生徒会活動にも積極的に参加。高校卒業後はアメリカへ。カリフォルニアにあるコミュニティ・カレッジで学び、その後、フランス・ロワール地方のナチュラルワインの農園で、住み込みで働いた。
「文字どおりの、武者修行。ナチュラルワインに人生を捧げる方々と過ごし、一緒に暮らす中でワインづくりのことを学びました。炎天下の夏も、凍てつくような寒さの冬も、1年を通じてブドウ畑での手仕事は絶えません。ナチュラルワインはオーガニックな農法でブドウを育てるので、その手間もひとしお。ナチュラルワイン生産者の絶え間ない努力を間近で感じる毎日でしたね。収穫期を迎えると、ブドウを手で摘んで醸造所へ。ワイナリーでブドウを選別し、アルコール発酵、圧搾、熟成、滓引き、清澄、濾過といったさまざまな作業が続きます。自ら飛び込んだ世界とはいえ、大変でした。同時に、多くの学びを得る刺激的な日々でした!」(森澤さん)
武者修行中は、畑仕事を続け、自分が作る側でいることも考え、大いに悩んだそう。
「自分らしく生きる生産者の価値観やその中で生まれるワインに惹かれ、作り手の持つアーティスト性を伝えたいという思いが強くなって帰国、家業を継ぎました」(森澤さん)
現在、「リカーMORISAWA」では常時500〜600種類のナチュラルワインをストック中。ナチュラルワインの黎明期から先代が30年以上にわたって作ってきたネットワークに加え、6代目店主・久仁平さんによる新たなルート開拓にも積極的。「ナチュラルワインの魅力をひとりでも多くの方に伝えていければと思っています」と、笑顔を覗かせる“若武者”の挑戦は始まったばかりだ。